こういうのがあの時見たかった、これを実現してくれる庵野秀明、ついでに冨野のお話

 この庵野秀明というクリエーターには感謝しかない。

子供の時に見ていた特撮番組や戦隊ヒーロー番組、SFアニメにSF映画、とくに「IF」を実現してくれるのがうれしい限りである。

この「IF」、これは「もし○○だったのなら」ということと「これは○○だったのでは」のイフ、もしもあれがこれだったのならばという別解釈をしたもののことである。

「シン・ゴジラ」で私は腰を抜かしそうになった。
高校生のころからずっと見たいと思っていたゴジラ映画のIF、それが庵野秀明氏により実現されていたのだから。
現在の環境での巨大な怪獣「ゴジラ」と戦う、そこには超科学も謎の超能力もなく、現在持つ知識と力と団結と協力で「ゴジラ」という理不尽で意味不明な破壊力に立ち向かうのである。
これをずっと見たかった。そう、長年の夢がかなったのである。

「シン・ウルトラマン」、これは庵野秀明氏が自らの夢の一部を叶えた映画である。
同人制作映画臭さの良い部分をところどころにわかりにくく鏤め、一部マニアの「おおっ!」という低いうなり声のような感歎のSEを拍手代わりに鑑賞できた映画だった。
個人的には「テレビとは違う画角での撮り方」と「空想特撮シリーズでの撮影角度の再現」がいくつか感じられ、古き良き特撮の香りが漂う新作だったのである。
庵野秀明氏はいわゆる「ウルトラマンになりたかった男」であり、彼の長年の夢が半分くらいは叶ったのではないだろうか。

「シン・仮面ライダー」大人目線で撮りなおす子供番組、子供だまし要素を大人の香りで描きなおした、これぞまさに「IF」な作品だった。
平成仮面ライダーシリーズからこのシリーズを好きになったファンからしたら、いまいちだったのではないかとさえ思うが、黒コート姿で立っている変身後の仮面ライダーを見た瞬間、石ノ森章太郎作品の持つ匂いに周囲が満たされるのである。ここの一瞬で、濃厚な「作品への異常な愛情」を感じたのである。


そして、庵野秀明氏が直接描くわけではないが、スタジオ・カラーの新作「ジークアクス」、これも「IF」なのである。最初にアムロ・レイがガンダムに乗らなかった世界、ここから始まる別の宇宙世紀の物語。

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富野由悠季氏は機動戦士ガンダムで「人と人が分かり合える世界」を描こうとし、伝説巨人イデオンで「人と人が分かり合えない世界」を描いた。
ガンダムでは人と人は分かり合えるはずだという考えだったが、結局分かり合えるというのは幻想だったのではと幕を閉じようとし、最後の最後にようやく分かり合えるということのきっかけまでたどり着いた物語だった。
かたやイデオンは些細なミスからお互いを信じることができなくなり、友人や知人、恋人や親子でさえ分かり合えなくなるという残酷な世界を描いた。最終的には分かり合うには滅ぶしかないということになってしまったわけだが。

さて、ジークアクス、どういう物語を見せてくれるのだろうか。良し悪しは脚本演出次第であるので、ダイジェスト版のような今回の劇場公開版だけで判断してしまうのはまだ早い。

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